ライデーンは現在まったくの独り身である。
小さなアパートに暮らしている。独りで起き、独りで朝飯を食べ、仕事から帰ると独りでビールを2本飲み、そして独りで眠りにつく。
そんな生活を5年間続けている。
「気楽でいいね」という人もいれば、「いろいろ大変だね」という人もいる。
彼は物心ついたときから、母親と二人暮らしであった。父親についての記憶はない。そして家はあまり裕福ではなかった。母親はスーパーで食品加工のパートをしていた。少年時代には、彼も人並みに、母親にテレビゲームをねだったり、おもちゃのロボットや拳銃なんかをねだったりしたのだが、かなえられたことはなかった。彼にも、そんな物を買う余裕はないという、家の経済状態はなんとなくわかっていたのだが、、、
息子の欲しがる物を買ってあげられないとき、母親は一瞬(自分でも気付いていないのかもしれない。そのくらい一瞬)悲しそうな目をした。ライデーンは母親のそんな悲しい目を見たくなかった。それから彼は母親に物をねだらないように努めた。ねだらなくなると、何かを欲しいと思ったり、何かに、こうしてもらいたいというような欲求が少なくなっていった。クリスマスにライデーンは母親から一度だけプレゼントをもらった。それは忘れられない思い出である。
彼が小学5年生のクリスマスイブの夜に、母は仕事場から真っ白い餅4個と、パックに入ったイチゴを持ち帰ってきた。そして餅の上にイチゴをいくつかのせて、小さなロウソクをたててクリスマスケーキらしきものを作った。「餅ケーキだよ。ライデーン」と言って母は笑った。そしてそれを二人で食べた。あまり美味しくはなかった。翌朝、彼がアパートの玄関を開けるとそこにピカピカの自転車があった。「ライデーンへ」というサンタクロースのイラストの描かれた小さなカードが、ハンドルにはさまっている。「お母さんありがとう」と彼が言うと、「私は知らないわよ」と母親は片目をつぶって笑った。
後にも先にも、プレゼントをもらったクリスマスは、その年だけであったが、その一度の経験はライデーンにとってクリスマスは「良い日である」というイメージを彼に植え付けたのだった。
彼が高校を卒業した年の暮れに、彼の母親は亡くなった。